東京のチンドン屋の営業スタイル>>チンドン屋 さん休のチンドン紹介記 〜チンドン屋が道を歩けば、街は笑顔笑顔！〜

さて、この連載をお読みいただいている方の中には、実際にはチンドン屋を見たことがない方もいらっしゃるのではないでしょうか？ そう思って今回は、チンドン屋といわれる職業の実態をお話しすることにしました（といっても、私がお話しできるのは東京の事情だけですが）。   第１回でお話ししたように、チンドン屋は、商業の宣伝をする仕事です。 その始まりは諸説ありますが、大量製作できる看板やポスター、新聞の折り込み広告、テレビ・ラジオＣＭ等が広告の主流となってゆく昭和３０〜４０年代以前には「宣伝の手段といえばチンドン屋しかなかった」と年配の商店主はよくおっしゃいます。

道を行進する順番（写真提供・セブン道楽様）

その後、そういった新しい広告手段の台頭によりチンドン屋の需要は減ってきたわけですが、東京のチンドン屋の主な仕事は、現在でも、街頭宣伝です。

依頼主の業種としては、半分以上がパチンコ・スロット店。他には、商店街、居酒屋・焼肉・そば・寿司等の飲食店、モデルルーム、美容室、携帯電話販売店、スーパーマーケット、ビジネスホテル、キャンペーンなどなど、路上で宣伝して効果がある、様々な業種から依頼を受けます。

これらをどのように宣伝して、どれだけたくさんの人に情報を伝え、どれだけたくさんのお客様を店舗・施設・会場に集められるかが、チンドン屋の腕の見せ所になるわけです。
手前味噌ですが、街頭宣伝では、キャンペーンガールやサンドイッチマン、チラシ配りといった隣接する業種のどれよりも、即時に集客効果があげられるのが、チンドン屋であります。

現場の人数は、３人の時が最も多いです。それぞれチンドン太鼓、ドラム（ゴロス太鼓とも呼ばれる）、管楽器（サックスかクラリネット）を演奏し、街頭宣伝では、写真のように、この順で道を行進します。私が小鶴家に入門した頃は、ビラまきか旗持ちを加えて、４人でやる現場も半分くらいありました。
旗持ちというのは、店名や宣伝内容を書いたノボリを持って踊り歩きながら、後の３人を先導するものです。

実際の仕事においては、扮装や演奏の内容・技術も大事ですが、最も重要なのは宣伝内容を伝える手段で、通行人に聞かせる口上、背中か太鼓の前に付けるポスター（通称・背負いビラ）、チラシ・ティッシュといった販促物の配布によって、情報を伝えます。
これらが見た人・聞いた人がすぐ理解できる的確な表現になっていないと、いくら見事な扮装で一生懸命ジャンジャンやってもお店に客が来ず、チンドン屋を頼んでも効果がなかった、ということになりかねません。

通常、東京のチンドン屋は、午前１０時から午後７時ぐらいの間で仕事をします。
拘束７時間以内、実働５時間３０分以内が標準的な業務時間ですが、移動に長時間かかる現場や、仕事の内容がイベントでの舞台演技などの場合はこの限りではなく、いろんなケースがあります。

ひとつ言えるのは、屋外でやるものですから、日が暮れて暗くなると繁華街など明るい場所以外では目につきにくくなり、効果は上がらず、したがって夜の現場は滅多にありません。

東京の場合、天候に関わらず、告知を依頼された店の開店やイベントが決行であれば、チンドン屋も仕事をやめることはありません。雨傘をつけて路上宣伝します。
日本は３日に１日は雨、といわれるくらい雨の日が多い国ですから、雨でできなくなるとチンドン屋は収入がなくなって困りますしね。

街頭宣伝の他にも、いろいろな種類の依頼があり、ふるさと祭り等のイベントでの舞台演技、結婚披露宴やパーティの余興、介護老人ホームの慰問といった仕事はよくあります。
チンドン屋はＰＡ機材（音響機器）が必要なく、どんな場所でも移動しながら演技できますから、いろんな使い方が可能です。どんな状況でも目一杯盛り上げて人を集めることが、プロのチンドン屋のプライドです。

次回は、チンドン屋の扮装についてお話します。是非お楽しみに。